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アメリカという「楽園」

ジョセリン・パク

私は毎年夏休みに韓国に帰っているが、デュークのTシャツを着て電車に乗っているときや信号を待っているとき、知らない人に話をかけられることがある。「もしかして、アメリカに留学していますか?」そうだと答えると、「やはり、空気が違うなあ。」のようなことを言う。そしてそこから質問の嵐が始まる。どこの学校に通っているか、アメリカ人の友達はいるかなどのとても私的なことについてどんどん聞いてくる。このようなことを何度も経験するうちに気づいたのは、韓国人の中にはアメリカでの生活は映画やドラマみたいだと思っている人が多いということだ。それから去年の夏二ヶ月間日本に留学したとき、日本人の中にも似たような質問を聞く人たちが特に若者の中に多いことに気がついた。

多分一番よく聞かれる質問の一つは「アメリカ人はみんな人生を楽しむことを大事にして、仕事が終わったらすぐ家に帰り、残業などは全然しないでしょう。」である。なぜかアメリカ人は日本人や韓国人と比べて仕事をあまりせず、休みも長く取るという考えをたくさんの人が持っているらしい。この考えはアジアでも人気があるハリウッド映画やシットコムの影響かもしれない。残念ながら、これは現実とはだいぶの距離がある幻想だ。もちろんアメリカでも一週間に五日、一日に八時間だけ働いて午後五時にチャイムが鳴るとすぐ帰宅する人がいて、仕事をサボる怠け者もいる。

しかし、「フレンズ」や「セックスアンドシティ」の主人公たちのような生活はテレビでしかありえないことだ。一流の企業で働かなければアメリカの一番物価が高いニューヨークで生活するのはなかなか難しい。一流の企業に勤めて高い給料をもらうためにはたくさんの仕事をしなくてはならないのは当たり前のことだ。私が知っているニューヨーカーの中で毎週週末に働かない人は一人もいない。これがアメリカでも一番忙しい都市、ニューヨークの現実である。

そしてもう一つの一般的な質問は「アメリカの大学は日本に比べて厳しいが、高校時代はそんなに勉強しなくても大丈夫でしょう。」である。正直、この考えにもあまり現実性はない。もちろんいい大学に行きたくなければ別にがんばって勉強しなくてもいいし、これは日本や韓国でも同じだと思う。しかし、ハーバード、プリンストン、スタンフォードのようないわゆる名門大学に入るためにはいい成績が必須条件である。大部分の場合はいい成績だけでは足りなくて部活動もがんばっていい履歴書を作らなくてはならないので、ある意味ではアメリカの高校時代は勉強だけがんばればいい日本や韓国より大変だと言えるかもしれない。

この二つの例からも明らかだが、アジア人がアメリカについて持っている考えはただの「偏見」だけではなく、アメリカを楽園のような場所だと間違っている「幻想」に近い。特にこのような幻想が、アメリカから輸入された映画やドラマに影響を与えられやすい若者の中に広がっているのは偶然ではないのではないかと思う。これは「アメリカン・ドリーム」ということで自分の国を誇張して映すアメリカのメディアにも、これをこのまま受けて放送する日本のメディアにも責任があるのではないかと思う。アメリカは決して楽園ではない。自分が欲しいものを手に入れるためにはそれに応ずる努力をしなくてはならない、だからみんなががんばっている社会である。アジアの色々な国の若者たちがメディアが作り出す幻想をそのまま信じて、「アメリカはなんでもできるのに、なんでここで生まれたんだろう」と考え、生きがいを失うのは非常に残念なことだ。若者たちに今の人生を生きる希望と意義を与えるために、売れる幻想ではなく現実を込めた正しい情報を伝える両国のメディアの責任はどんなに強調しても足りない。

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